2024.05.06

場所・坂・街角風景

Vol.3429　小金井路上観察　ほとんど意味のない「石」のある風景

東小金井駅から連雀通りに向けて伸びる栗山通りと、農工大通りとの交差点「東小金井駅入口」に、不思議な石柱があります。

四つ辻の南西側、２０２４年２月まで田中整形外科が入っていたビルの角にぽつねんと立つ、高さ８０cm程の味わい深い石柱があり、これはいったいなんだろうとここを通るたびに眺めています。

多くの人が行き交う交差点ではありますが、誰からも見向きもされていない様子です。
しかし、これは一体なんでしょう？
ここにあるからには何か意味があるはずです。

注目しておきたいのは、通りを挟んで北側の角にも、同じくらいの高さの金属製のポールがあることです。
よく見ると、ポールにはかすり傷と思われるものが無数についています。

確かに、狭い交差点ですから、大きい車などは内輪差で擦ってしまうこともあるかもしれません。

それでわかりました。きっとこれは「いけず石」ではないでしょうか。

ウィキペディアによれば「いけず石」とは、

「主に京都市内でみられる、車よけのために住宅等の敷地の角や端に設置される石。主に狭い路地や曲がり角に建つ住宅等の敷地の角や端に設置される漬物石～ひざ下程度の大きさの石で、車両の進入による塀や外壁などへの接触・損傷を防ぐ。」

「京言葉の「意地悪」という意味の「いけず」、「これ以上先へ行けない」という意味の「行けず」など、諸説ある」ということ。（Wikipedia「いけず石」より）

京都ほどではないかもしれませんが、確かに東小金井駅の南側は、碁盤目状に通りが東西南北に張り巡らされていて、この交差点も車道にしては狭いですね。

しかしこの交差点では、信号機の支柱がいけず石より前にあって、いけず石を守るようなかたちになっており、本来の役割を果たせていないので、まったく存在する意味がないわけですが。

でもわざわざ壊す理由もないので、こうして残ってしまったのでしょうか。そう思うとなんとも愛おしい存在です。しかも、のっぺりとした柱ではなく、下部が太くて頂部に丸みがある特徴的な形です。

（２０２２年撮影　いけず石の横に青い自販機があった）
つい先日までは、脇に自販機が設置されており、さらに存在感が薄かったのですが、自販機が撤去されても、このいけず石は静かに佇んでいるのです。

農工大通りを西側に数十メートル進むと、同じく住宅角にもありました！

こちらは公園の入口や歩道と車道の仕切りのボラードとして使われているのを見たことがある、現代的なタイプですが、ちゃんと擦り傷があり、いけず石の仕事をしています

そしてさらに農工大通りを西へ進み、栗山公園内です。

これは公園内に他にも２カ所に同じものがあり、車道からの車両の侵入を防ぐために設置されていることはわかるのですが、このいちばん農工大通りに近い入口にある石は、なぜか公園のコンクリート塀の裏側に設置されていま
す。

車止めであれば、柵のない場所に本来置くべきものですが、どういうわけか柵の内側に設置されています。
人通りの多い交差点前ということもあって、ちょっとこの石に腰掛けて休もうという気にもなれません。

柵の外に置いておけば、それこそ、いけず石になったのかもしれません

何のためにあるのかわからない、深く考えたら必要のないものが街の中にはたくさんあり、
そんなものを見つけたり、何だろうと無駄に考えたり。
路上観察が楽しい小金井の街です。