VOL.1577 小説「聖ヨハネ病院にて」が復刊されました。

小金井が舞台となった小説で、上林暁（かんばやしあかつき）が昭和21年に発表した「聖ヨハネ病院にて」が文庫本で新潮文庫より復刊されました。上林暁は当時人気があった私小説の作家です。伊藤整とも交友があり復刊の解説も伊藤整が書いています。また、小金井を舞台にした小説は「武蔵野夫人」が有名ですが、三島由紀夫の短編「雛の宿」も場所は小金井です。「聖ヨハネ病院にて」は新潮文庫の復刊第一回配本として復刊されましたが、残念ながら売り切れとなっています。

終戦直後の桜町病院で、奥さんの看病を小説にしています。
「日曜日の朝には、時々彌撒（ミサ）の歌を唱ふのが聞こえるとは、妻から聞いていた。」と書かれているミサは実際に桜町病院で今も5月に行われています。

桜町病院のホームページより転載：初期の桜町病院写真

「暗くて誰一人通るものもいない野中の往還を、病院目指して急いでいると、行く手を阻むように、野川が氾濫して、往還の一ところを終始水浸しにしてゐる。」往還とは主要道路なので小金井街道です。

小説では「野川」と書かれていますが、これは川という意味で場所からは現在本町2丁目の「仙川」ではないでしょうか。写真は昭和41年の本町2丁目洪水の写真です。昭和41年でもまだ千川は洪水がありました。（小金井市広報写真より。）

昭和12年の地図にはまだ桜町病院はありません。

最後の附記でも転院する場面で、運送屋のリヤカーで奥さんを転院させる場面で「街道を避けて裏道を選び、」とあります。昭和12年、30年（「わたしたちのまち小金井」付録の復刻地図）の地図にも
桜町病院の東・西側に面した道はそのままあります。このあたりは坂が多く、
お大尽の坂やごぜの坂などと呼ばれた坂が多いところです。